昨今、行政サービスにおいてIT技術やデータを活用し、デジタル社会に対応したデジタル・ガバメントを実現するための取り組みが行われています。
この記事では、「デジタル・ガバメント実行計画」が企業に与える影響や社会保険・労働保険関連手続きのデジタル化について解説します。
目次
- 「デジタル・ガバメント実行計画」とは
- 「デジタル・ガバメント実行計画」が企業に与える影響
- 具体的な事例-社会・労働保険関連手続きのデジタル化(電子申請)について
- おわりに
1.「デジタル・ガバメント実行計画」とは
「デジタル・ガバメント実行計画」とは、社会全体のデジタル化をより強く推進していくために、国や地方公共団体といった行政機関が先行して行う”デジタル・トランスフォーメーション”を言い、行政サービスの利用者(国民)の立場に沿った行政手続きのオンライン化等を推進するために策定された施策を言います。
2018年の初版策定後、取り組みの進展や新型コロナウイルス感染症への対応で明らかになった課題を踏まえ、2020年12月25日に改定されました。
2.「デジタル・ガバメント実行計画」が企業に与える影響
企業が行う従業員の社会保険・税手続きについては、手続きのオンライン・ワンストップサービス化の実現や、各種手続きにおける情報の重複提供を不要とするワンスオンリー化の実現によって、従業員の生産性の向上を図る取り組みが進められています。
このような手続きの効率化に向けて、行政サービスは、利用者を中心としたサービス改革が求められており、企業としては、企業だけでなく従業員を含めた利用者視点で、システムサービスの導入などを検討する必要があります。
【デジタル・ガバメント実行計画が進むことによって】
- 一つの行政機関に届け出ることで、複数の行政機関への手続きが完了する。
- 手続きに必要な同じ添付書類を何度も用意しなくても良い。
- 利用者が行政機関へ情報を受け取りに行くのではなく、行政機関が利用者にマッチする情報を提供する。
【企業への影響】
- 従業員に対して、より繊細で丁寧な情報の提供とその活用の支援を行うことを求められる。
- 行政機関と情報連携が適切に行えるシステムサービスを選択する。
- 情報の利用価値が高まることによる高度な情報セキュリティが必要とされる。
3.具体的な事例-社会保険・労働保険関連手続きのデジタル化(電子申請)について
2020年4月1日から、行政手続きの簡素化及びデジタル化を目的として、一定規模以上の企業の社会保険・労働保険手続きが電子申請義務化の対象となりました。
電子申請の手続きは、各府省庁が所管する様々な行政機関への申請や届出などの手続きをWeb上で行うことができる電子申請システムである“e-Gov(イーガブ)“を通して行うか、外部連携APIに対応したソフトを利用して申請することができます。
弊社では、「デジタル・ガバメント実行計画」が推進される以前の2010年から社会保険・労働保険手続きを電子申請に移行し、時間、場所、コスト面での効果を実感しております。例えば、離職票10人分を申請する場合、紙申請であれば200分ほどかかる作業が、電子申請では一括申請により10分に短縮できました。
また、2014年に社会保険・労働保険手続きにおけるe-Govから外部連携API仕様の公開を受けて、手続きの専門家としていち早く電子申請手続きに特化したシステム「e-asy電子申請.com®」の開発を進め、2014年から販売を開始し、現在、大手家電メーカーをはじめ、多数の企業にご利用いただいております。2020年からは、「ProActive E2」人事給与システムの従業員情報を「e-asy電子申請.com」へ連携する、電子申請連携ソリューションの提供を開始したことで、より効率的に社会保険・労働保険の電子申請を行うことが可能となりました。
【電子申請連携ソリューション 連携イメージ図】
さらに、「デジタル・ガバメント実行計画」において、社会保険・労働保険関連手続きを行う上で懸念されていた「健康保険組合」に対する手続きも、マイナポータル経由により電子申請対応が可能となりました。
4.おわりに
デジタル庁の設置を見据えた「デジタル改革基本方針」において、デジタル社会の目指すビジョンが示され、今後デジタル化はますます推進されるでしょう。
重要なのは、行政ではなく利用者中心のサービスを展開していくということです。そのためには、官民が連携していく必要があるため、企業もデジタル・トランスフォーメーションの実現に向けた施策に積極的に取り組むことが不可欠となっていくでしょう。
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