育児介護休業法の法改正について

令和3年6月3日、改正育児・介護休業法が成立しました。今回の法改正により、育児・介護休業規定等にまつわる就業規則の修正が必要にとなります。
この記事では、育児・介護休業法の法改正ポイントについて解説します。

目次

  1. 改正の背景
  2. 今回の法改正ポイント
  3. 改正により、企業に求められる対応
  4. おわりに

1.改正の背景

厚生労働省は2010年より、男性の子育て参加や育児休業取得の促進等を目的とした「イクメンプロジェクト」を実施しております。しかし、令和2年に行われた雇用均等基本調査の結果によると、女性の育児休業取得率が81.6%であるのに対して、男性の育児休業取得率はわずか12.65%でした。令和元年度の男性の育児休業取得率が7.48%であったことを踏まると、取得率は増加していますが、依然としてその差には大きな隔たりがあります。このような状況を打破すべく、より柔軟な取得ができるように今回の改正法案が作成されました。

 

育児休業者(女性)の有無別事業所割合
育児休業者(男性)の有無別事業所割合

 

2.今回の法改正ポイント

では、具体的にどのように改正されるのか解説していきます。変更点は大きく5点です。

「出生時育児休業」の創設

現行の育児休業制度では、子が原則1歳(最長2歳)までの取得が可能でしたが、法改正により、子の出生直後、配偶者も育児休業が取得しやすいよう新たに「出生時育児休業」が創設され、現行制度に加えて子の出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得可能となりました。
新制度では、育児休業の申出期限について、現行法は1か月前までの申出期限に対し、出生時育児休業では原則休業の2週間前までの申請が可能です。また、休業中の就業について、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲で休業中に就業することが可能となっています。

②育児休業の制度周知・雇用環境整備・取得意向を確認する義務

事業主は、本人もしくは配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対して、育児休業制度の個別周知・雇用環境の整備・育児休業の取得意向の確認が義務付けられます。

③育児休業の分割取得

現行制度では不可能であった育児休業の分割取得が可能となりました。分割して2回まで取得が可能ですが、ここで1点注意が必要です。今回の改正により、出生時育児休業(出生後8週間以内に取得)と現行の育児休業(原則1歳(最長2歳)までに取得)の2度の育児休業取得が可能となりました。この2度の育児休業それぞれで2回の分割取得が可能です。つまり、合計4回の育児休業を取得することができます。

④有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件が緩和されました。現行では、育児休業を取得するにあたって、以下の2つの要件を満たす必要があります。

1. 事業主に引き続き雇用された期間が1年以上ある。
2. 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかではない。

改正では1の要件が撤廃され、無期雇用労働者と同様の取扱いをします。ただし、引き続き雇用された期間が1年未満の労働者は労使協定の締結により除外可能です。

⑤育児休業の取得状況の公表の義務化

従業員数1,000人超の企業は、育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます。

 

3.改正により、企業に求められる対応

改正により企業が対応しなければならないポイントは、大きく分けて3つです。

1つめは、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備です。具体的な内容については、研修の実施、相談窓口の設置等、複数の選択肢からいずれかを選択して措置をすることとなります。今後定められる省令を確認し、自社にあった方法の導入について検討しましょう。

2つめは、本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者に対する、育児休業制度の個別周知・意向確認の実施です。育児休業の個別周知の方法については、省令において定められ、面談での制度説明、書面による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択して措置をすることとなります。また、育児休業取得意向の確認は、事業主が労働者に対し、育児休業の取得を控えさせるような形での実施を認めないことを定められる予定です。
まずは、本人または配偶者の妊娠・出産の申出をした労働者がいた場合に制度を周知するため、人事担当者自身が適切な知識を身につけましょう。そのうえで、申出を受けてから、周知・意向確認までの一連の流れを決めておくと良いでしょう。周知方法や内容といった細やかな内容は今後決定される厚生労働省令に則って決める必要がありますので、事前に枠組みを用意しておきましょう。

3つめは、従業員数1,000人超えの企業について、育児休業取得状況の公表です。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」と省令で定められる予定です。また公表方法は、上場企業などについて有価証券報告書などの企業公表文書への記載を促していく見込みとなります。今後、男性の育児休業取得率は、企業の社会的責任として企業イメージを形作る要素の一つとなるでしょう。取得率の公表を義務付けられた作業とはとらえず、企業イメージ戦略の1つと捉え、準備をしてもよいかもしれません。

 

4.おわりに

まずは、育児・介護休業規定等がどのように定められているのかを確認しましょう。詳細を定める厚生労働省令や施行日等未確定な部分が多いですが、今回の改正で義務化された内容を把握し、従業員の方への説明や相談体制の整備等を事前準備しておくことが肝要となります。

(参考)厚生労働省|育児・介護休業法について

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP