【2022年(令和4年)度】労働保険の年度更新について

2022年度の労働保険の年度更新手続きを行う時期となりました。今年度の変更点として、年度の途中より保険料率が異なることが厚生労働省より発表されています。
今回の記事では、労働保険の年度更新について、今年度の変更点から手続きの基本知識まで、詳しく解説します。

目次

  1. 2022年度 労働保険年度更新手続きの変更点
  2. 労働保険の年度更新とは
  3. 年度更新手続きの流れ
  4. 年度更新手続きのQ&A
  5. 労働保険の年度更新における電子申請利用のメリット
  6. おわりに

 
 

1.2022年度労働保険年度更新手続きの変更点

2022年(令和4年)度は、年度の途中より保険料率が変更となるため、注意が必要です。

  • 4月から、事業主負担の保険料率が変更となります。
  • 10月から、労働者負担・事業主負担の保険料率が変更となります。

令和4年度の雇用保険料率

出典:厚生労働省|令和4年度の雇用保険料率について

今年度の年度更新における注意点としては、概算保険料の算出において2つの期間に分けた賃金総額見込み額に各保険料率を乗じ、保険料を算出します。
後述する賃金集計表の下段等にも、概算保険料の算定内訳の記載欄がありますので、期間ごとの記入に気を付けましょう。

令和3年度 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表/令和4年度 概算保険料(雇用保険分)算定内訳

出典:厚生労働省|労働保険関係各種様式
「令和3年度 確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表/令和4年度 概算保険料(雇用保険分)算定内訳」

 
 

2.労働保険の年度更新とは

【労働保険とは】

労働保険とは、労働者災害補償保険(以下 労災保険)と雇用保険の総称です。保険給付は、両保険制度(労災保険と雇用保険)のもと別々に行われますが、保険料の申告・納付は、労働保険料として一括で行います。この申告・納付手続きが、以下で説明する年度更新となります。原則として、事業主は労働者を1人でも雇用していれば、労働保険の適用事業となり、労働保険料を納付する必要があります。

参考:厚生労働省|労働保険とはこのような制度です

【労働保険の年度更新とは】

労働保険料は、4月1日から翌年3月31日を対象期間として、その間の賃金総額に定められた保険料率を乗じて算定します。また、申告方法としては、保険年度毎に概算で保険料を申告・納付し、年度末に賃金総額が確定後、翌年度に精算します。したがって、事業主は年度更新期間である毎年6月1日から7月10日までの間に、新年度の概算保険料と前年度の確定保険料の申告・納付の手続きを併せて行うこととなります。期日が土曜日・日曜日・祝日の場合は次の平日が期限となるため、令和4年度の年度更新期間は6月1日~7月11日までとなります。
 
 

3.年度更新手続きの流れ

① 賃金集計表の作成

対象期間の賃金総額の集計に使用します。賃金集計表は提出の必要はありませんが、申告書作成の基礎となるため、申告後は事業所にて申告書控えと併せて保管を行います。賃金集計表は厚生労働省ホームページに掲載されていますので参考にご確認ください。

参考:厚生労働省|労働保険関係各種様式

② 申告書の受領・記入

毎年5月末までに、事業主宛てに申告書が届きます。賃金集計表をもとに申告書へ労災保険、雇用保険それぞれの対象賃金と保険料額を記入します。また、申告書内で前年度の確定保険料、および今年度の概算保険料の記入欄がそれぞれ設けられています。

③ 申告書の提出・納付

申告書は、金融機関、管轄の労働局、管轄の労働基準監督署、社会保険・労働保険徴収事務センター(年金事務所内)のいずれへも提出が行えますが、申告書へ添付されている領収済通知書(納付書)は金融機関へ提出の上で保険料の納付となります。なお、納付については口座振替や電子納付も可能です。
※口座振替を利用の場合は、金融機関への申告書提出は行えません。
 
 

4.年度更新手続きのQ&A

Q:計算対象期間は?

算定期間中(4月1日から翌年3月31日まで)に支払いが確定した賃金は、実際に支払われていなくても算入する必要があります。
例えば、当月末締め翌月15日払いの会社は、5月15日払いから翌年4月15日払いまでの賃金総額で集計します。

Q:計算対象者は?

労災保険は、原則として、常用・日雇・パート・アルバイト等名称や雇用形態にかかわらず、労働の対償として賃金を受けるすべての労働者が対象です。
雇用保険は、原則として、常用・日雇・パート・アルバイト等名称や雇用形態にかかわらず、次のいずれにも該当する労働者が対象です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上の雇用見込みがある場合

労災保険と雇用保険では労働者の対象範囲が異なる場合があります。あらかじめ対象範囲を明確にし、手続きを行いましょう。

Q:計算方法は?

労働保険料は、4月1日から翌年3月31日までの1年間に、事業主がすべての労働者に支払う見込みの賃金総額に、労災保険料率と雇用保険料率を乗じて算定します。一般拠出金については、賃金総額に一般拠出金率を乗じて算定します。
労災保険料は、常用・日雇・パート・アルバイト等すべての労働者に支払われた賃金に、労災保険料率を乗じて計算します。労災保険料率は、業種ごとに区分されていて、1,000分の2.5から1,000分の88の範囲で定められています。
雇用保険料は、雇用保険被保険者に支払われた賃金に雇用保険料率を乗じて計算します。
一般拠出金は、石綿(アスベスト)による健康被害の救済に関する法律により、石綿健康被害者の救済費用に充てるため、申告・納付が始まりました。一般拠出金は、労災保険料の対象となる賃金総額に一般拠出金率の1,000分の0.02を乗じて計算します。

Q:賞与や休業手当も計算対象?

賃金総額とは、事業主が労働者に対して、賞与等の名称に関係なく労働の対償として支払うすべてのものを言います。従って、賞与や休業手当も計算対象となります。

Q:納付回数は分けられる?

概算保険料が40万円 (労災保険または雇用保険のいずれか一方のみの成立は20万円以上)の場合は、3回に分けての納付(延納)が行えます。令和4年度の納期限は、第1期7月11日、第2期10月31日、第3期1月31日です。

Q:口座振替の手続きの流れは?

事前に申し込み用紙を厚生労働省ホームページからダウンロード、もしくはお近くの労働局・労働基準監督署の窓口で入手を行い、金融機関の窓口で提出します。口座振替納付日が通常の納期限よりも日数にゆとりがある点や、口座引き落としにより納付忘れ・漏れを防げる点がメリットとなります。詳しくは、厚生労働省ホームページや、労働局・労働基準監督署の案内リーフレットをご覧ください。

Q:年度更新手続きを効率的に行う方法は?

労働保険年度更新手続きについては、電子申請を利用することで手続きを効率的に実施できます。
 
 

5.労働保険の年度更新における電子申請利用のメリット

紙で申請を行う場合、事業主は申告書に手書きで記入し、申告書および納付書は窓口へ提出が必要です。手書きの手間だけでなく、窓口へ出向く時間や交通費等のコストも非常に負担となります。申告書は郵送提出もできますが、手書きの手間がかかることには変わりありません。
それに対して、電子申請の利用の場合は窓口を回る手間がなく、申請サイトを通して会社や自宅のパソコンから手軽に手続きが可能となります。
小林労務が提供する、電子申請手続きに特化したシステム「e-asy電子申請.com®」は、労働保険の年度更新に対応しています。e-asy電子申請.com®では、最初に労働保険番号等の会社基本情報を登録していれば、年度更新の手続きの際に、会社基本情報を再び入力する必要がありません。さらに、もし異なる項目に入力してしまった場合でも、エラーチェック機能が備わっているため、正しい入力箇所も事前に確認することができ、年度更新手続きが初めての方でも安心してご利用いただけます。
 
 

6.おわりに

事業主が労働保険料を納付期限までに納付しない場合、延滞金が徴収されます。また、年度更新の申告手続き自体が遅れますと、政府が納付額を決定し、さらに追徴金(納付すべき労働保険料・一般拠出金の10%)を課す場合があります。
今回のコラムで紹介した通り、効率的な電子申請や納付方法がありますので、そちらも活用しながら、年度更新の手続きは必ず申告・納付期限までに済ませるようにしましょう。

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