戦後の復興を契機に、1947年に労働省が創設され、旧憲法に基づく帝国議会によって労働者保護を目的に労働基準法が制定されました。この労働者保護を目的というのは、日本国憲法第27条第2項において規定されている「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」を受けており、全ての労働者に対し「健康で文化的な最低限度の生活」保障するということを指しています。成立当時の労働基準法では、労働時間が1日8時間・週48時間であり、時間外労働・深夜労働・休日労働についての割増賃金率は25%と定め、最低限度の労働者の権利を確立させたのです。
そして、労働基準法は、現在に至るまで日本の労働情勢に沿って度々法改正が行われてきた訳ですが、その変遷を辿ることは、「故きを温ねて新しきを知る」という言葉があるように、社会保険労務士として業を成す私にとって活かせるものだと思っています。今なら当たり前だと思うことも、当時は、目新しさもあったかもしれません。そのような事を考えて執筆すること自体、社会保険労務士としての喜びだとも感じています。
また、社会保険労務士は、「ヒト・モノ・カネ・情報」という経営資源のうち、「ヒト」を扱う専門家です。今後の日本社会で唯一減少していくと言われる「ヒト」ですが、組織・労働環境の整備を行う労務管理とは密接な関係があります。その労務管理の歴史を追求することは、これまで人事労務に関する諸問題や就業規則、労使協定の作成・改定などに携わってきた社会保険労務士が発信することが役目だとも考えています。
そこで、小林労務では「労務管理の歴史」として、職員に各節を担当してもらい、労務管理の根幹である労働基準法をはじめ、社会保険労務士業に係る法令について整理していくこととしました。
第1章では、労務管理の基本である労働基準法の成り立ちとその変遷を追っていき、約半年かけて労務管理の歴史を紐解く始まりにしたいと考えています。
第1節 労働基準法成立
第2節 労働安全衛生法の制定に伴う改正
第3節 男女雇用機会均等法の制定に伴う改正
第4節 労働時間法制の改正
第5節 裁量労働制の改正
第6節 働き方改革関連の改正
第7節 総括
令和5年6月
千鳥ヶ淵研究室 主任研究員 小松 容己
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