第5節 諸外国のテレワーク
千鳥ヶ淵研究室 研究員 黒沢和也
1、日本におけるテレワーク状況
日本は世界的に見てもテレワークの普及状況はあまりよくない。特に欧米諸国はテレワークの普及が進んでいるのに対して、日本を含むアジア地域の普及率は低いことがコロナ禍以前より大きく発表されている。
2、コロナ禍以前のテレワーク状況
厚生労働省テレワーク総合ポータルサイトでは、各国の企業におけるテレワークの導入率が発表されている。
出典:厚生労働省 テレワーク総合ポータルサイト 海外のテレワークの導入状況
テレワーク先進国といわれるアメリカでは、85.0%と突出しており、次いで欧州各国が続いている。このデータは、アメリカ2015年、欧州各国2010年、日本2018年の調査を集計している。一概に各国を比較する事は困難であるが、日本に比べ8年前の欧州各国で既に高い普及率を示しているところが多く、日本の導入率が低いことが伺える。
3、各国におけるテレワーク事情
アメリカのテレワーク導入率は85.0%と非常に高い。この背景には雇用の特徴として、日本とアメリカでは人材採用と配置の基本的な考え方が異なる。日本では採用後に配置を考える方式に対し、アメリカでは業務内容に応じて人材を採用していく方式である。このため勤続年数や勤務態度よりも成果が重要であり、テレワークという働き方が浸透しやすい環境であったのではないだろうか。また2010年には「テレワーク強化法」が制定され、テレワークの普及が一層促進されたものと考えられる。
イギリスではアメリカに次いでテレワーク導入率が高い。2012年のロンドンオリンピックが開催される事により、交通量削減の対策としてテレワークを導入した。これによりテレワークが普及していく事となった。
フランスはテレワーク導入率が14.0%と日本より低い。しかしながらフレキシブルな働き方の考え方が進み、テレワークの普及が進んでいる。日本と労働の考え方は異なっており、日本では残業することは会社への忠誠心の一因として美徳と考えられがちだが、フランスでは残業することは仕事が出来ない人間と考えられてしまう。1998年に「週35時間労働制」が施行されワークライフバランスを実現した働き方となっている。コロナ過を機にテレワークが普及していく事が予想される。
4、まとめ
コロナ禍の世界的規模のテレワーク導入調査は、今現在、公の機関より発表されておらず、今後の報道を待たざるを得ないが、「第4節 統計でみるテレワーク」からも見て取れるように日本でのテレワークの普及率は上昇している。各国のテレワークの普及率も上昇している事であろう。
日本では、社内コミュニケーションを重視した働き方が根強く、テレワークの導入が進みづらい環境である。日本でテレワークをさらに浸透させていくためには、各国の導入手法や働く環境の見直しなど企業の考え方も変えていく必要があるのではないだろうか。
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